2012年08月18日
匠がもの申す第5弾
■大黒柱とケヤキの話
今日は大黒柱の話をしたいと思います。
大黒柱のある家、最近は減ってきています。
コストダウンするためと、デザイン的に好まない人がいるから
……というのが理由のようです。
でも、はっきり言います。
大黒柱があったほうが、絶対に丈夫です!
通し柱だけよりも、大黒柱と女大黒があることで
確実に長持ちしますし、ひずみもまったく違います。
地震や台風などの震災にも強いのです。
20〜30坪の住宅であれば、大黒柱を入れること自体が難しいのですが、
50坪以上の大きな住宅の場合は、大黒柱があるのと無いのとでは まったく違うでしょうね。
お父さん(大黒柱)がいて、
お母さん(女大黒)がいて、
家族がしっかり団結するのと似ている気もするんですね。
リーダーがいる組織は、団結力がありますしね!
大黒柱が無くても大丈夫かと聞かれると、
構造的に絶対にダメなわけでは無いんです。
例えば、京都の町家などは狭い空間で効率よくスペースを作るため
いわゆる大きくて太い大黒柱は、あまり見かけないようです。
この三河に大黒柱が普及したのは、戦国時代以降、城や神社、お寺などの整備をしたことが、
きっかけではないでしょうか。
さらに、三河は徳川家ゆかりの土地柄なので、腕の良い
職人を、集めて来たのではないかと考えられるでしょう。
また、伊勢湾台風による被害の結果とも関係しているようです。
伊勢湾台風のときに、渥美半島近辺の木造家屋では、
新築中(建前して骨組みのみ)で、細い通し柱だけだった家は、
2階から上の部分がほとんど折れていたそうです。
6寸角の通し柱+大黒柱で建てた家だと、
柱はほとんど折れることが無く立っていたようでした。
災害があると、その強度で明暗がはっきり分かれますね。
地場の大工は、そういう歴史を知ったうえで建てているんですね。
さて、大黒柱に使う柱はどのぐらいの太さかというと、
例えば、50坪の家に対して、
8寸角(24cm)の大黒柱×1本
6寸角(18cm)の女大黒×1本。
残りは、5寸角(15cm)の通し柱を 数本(面積や設計によって異なる)使用します。
僕らが言う、女大黒(めだいこく)は、
姫大黒、小黒柱、副大黒とも呼ばれるようですね。
地方によって、呼び名が変わるようです。
大黒柱に使用する材木の値段は、
節の有無、年輪の細かさによって、まったく異なります。
数万円から数十万円、数百万円するものまであります。
素材は、やはりケヤキです。
ケヤキは日本の樹木の王様と言われており、
その木目の美しさが素晴らしい!
そして、とても固くて丈夫という特徴があります。
でも、実は曲がりやすいという欠点もあります。
僕の場合は、まず、材木の卸売市場で、
木目を見ておとなしそうで、まっすぐな子を選びます。
そして、前回の記事で書いたように、 僕は材木を必ず寝かせますので、
寝かせながら乾燥させて曲がるかどうかを確認しながら見ていきます。
曲がってきた子は、見た目で分かりますので、そんな子は、
違う使い道(通し柱)以外の役割を与えます。
これならいい子だと思って乾燥させても、曲がっちゃう子もいるんです(笑)
ケヤキの場合は、最低でも5年寝かせて様子を見ますが、
こだわっている棟梁なら、10年寝かせると言われています。
ケヤキの魅力は、とにかく杢目(もくめ)の美しさ。
玉杢(玉目)と呼ばれる、渦状の丸くて美しい杢目が魅力。
この1〜1.5cmの玉杢1つに付き、1万円の価値がある とも言われているんですよ。
なかでも、全体に赤みがかっているものが重宝されてきました。
ただ、固過ぎて、実は職人泣かせの木なんです。
ノミ、カンナといった道具がすべて傷むのです。
そのぐらい固い!
でも、その分、丈夫なんですね。
ヒノキとの違いでいうと、ヒノキは育つ環境が良ければ成長しやすく(太くなりやすく)
上に伸びていくんです。そうなる事で、通し柱に使う事が出来る長さに、
成長するんですね。
しかし、ケヤキは、5~6メートルくらいのところで、枝がわかれて行きやすく、
なかなか、通し柱に使えるくらいの長さに、真直ぐ育ちにくいんですね。
しかも、固くて扱いにくく、木目のように曲がっていく、
見る目がないと、使えない材料なんですね。
そんな事を、踏まえながら、 何年も寝かせてみなきゃ、選べない、使えない。
それでも美しいケヤキが重宝されてきたのは、
それだけ、使えるケヤキが少なくなり時間がゆっくり、
流れていたからかもしれません。
大切にゆっくり時間をかけて素材を選び、
ゆっくり時間をかけて建てていく。
それでも、丈夫で長持ちする家を造り 末代まで残してやりたい、
という願いが、 今の古民家の味わいに繋がっているのでしょう。
自分が毎日暮らす家だからこそ、 素材や内容にこだわり、
大切にていねいに選んでいく。
それが、日本家屋だと思います。
ていねいに暮らす。
大切なものを子どもに伝える。
自然が生み出す美しいものが好き。
そういう生き方に共感できる人になら きっと、
日本家屋の良さも伝わるのではないかと思います。
このグログを、読まれて、色んなご意見があるとは思いますが、
長く住み続けて頂きたいとの思い、ケヤキの希少価値等、
日本の木をよく知って頂きたいとの思いからです。
皆様のご理解を賜りたいと思います。
棟梁
長楽 加藤建築 ホームページはこちら
http://www.nagara-katou.biz
大工のつれづれ長楽日記日々更新します
ながらの母ちゃんことかかのブログもご覧ください
ブロガーリレーご覧ください。

今日は大黒柱の話をしたいと思います。
大黒柱のある家、最近は減ってきています。
コストダウンするためと、デザイン的に好まない人がいるから
……というのが理由のようです。
でも、はっきり言います。
大黒柱があったほうが、絶対に丈夫です!
通し柱だけよりも、大黒柱と女大黒があることで
確実に長持ちしますし、ひずみもまったく違います。
地震や台風などの震災にも強いのです。
20〜30坪の住宅であれば、大黒柱を入れること自体が難しいのですが、
50坪以上の大きな住宅の場合は、大黒柱があるのと無いのとでは まったく違うでしょうね。
お父さん(大黒柱)がいて、
お母さん(女大黒)がいて、
家族がしっかり団結するのと似ている気もするんですね。
リーダーがいる組織は、団結力がありますしね!
大黒柱が無くても大丈夫かと聞かれると、
構造的に絶対にダメなわけでは無いんです。
例えば、京都の町家などは狭い空間で効率よくスペースを作るため
いわゆる大きくて太い大黒柱は、あまり見かけないようです。
この三河に大黒柱が普及したのは、戦国時代以降、城や神社、お寺などの整備をしたことが、
きっかけではないでしょうか。
さらに、三河は徳川家ゆかりの土地柄なので、腕の良い
職人を、集めて来たのではないかと考えられるでしょう。
また、伊勢湾台風による被害の結果とも関係しているようです。
伊勢湾台風のときに、渥美半島近辺の木造家屋では、
新築中(建前して骨組みのみ)で、細い通し柱だけだった家は、
2階から上の部分がほとんど折れていたそうです。
6寸角の通し柱+大黒柱で建てた家だと、
柱はほとんど折れることが無く立っていたようでした。
災害があると、その強度で明暗がはっきり分かれますね。
地場の大工は、そういう歴史を知ったうえで建てているんですね。
さて、大黒柱に使う柱はどのぐらいの太さかというと、
例えば、50坪の家に対して、
8寸角(24cm)の大黒柱×1本
6寸角(18cm)の女大黒×1本。
残りは、5寸角(15cm)の通し柱を 数本(面積や設計によって異なる)使用します。
僕らが言う、女大黒(めだいこく)は、
姫大黒、小黒柱、副大黒とも呼ばれるようですね。
地方によって、呼び名が変わるようです。
大黒柱に使用する材木の値段は、
節の有無、年輪の細かさによって、まったく異なります。
数万円から数十万円、数百万円するものまであります。
素材は、やはりケヤキです。
ケヤキは日本の樹木の王様と言われており、
その木目の美しさが素晴らしい!
そして、とても固くて丈夫という特徴があります。
でも、実は曲がりやすいという欠点もあります。
僕の場合は、まず、材木の卸売市場で、
木目を見ておとなしそうで、まっすぐな子を選びます。
そして、前回の記事で書いたように、 僕は材木を必ず寝かせますので、
寝かせながら乾燥させて曲がるかどうかを確認しながら見ていきます。
曲がってきた子は、見た目で分かりますので、そんな子は、
違う使い道(通し柱)以外の役割を与えます。
これならいい子だと思って乾燥させても、曲がっちゃう子もいるんです(笑)
ケヤキの場合は、最低でも5年寝かせて様子を見ますが、
こだわっている棟梁なら、10年寝かせると言われています。
ケヤキの魅力は、とにかく杢目(もくめ)の美しさ。
玉杢(玉目)と呼ばれる、渦状の丸くて美しい杢目が魅力。
この1〜1.5cmの玉杢1つに付き、1万円の価値がある とも言われているんですよ。
なかでも、全体に赤みがかっているものが重宝されてきました。
ただ、固過ぎて、実は職人泣かせの木なんです。
ノミ、カンナといった道具がすべて傷むのです。
そのぐらい固い!
でも、その分、丈夫なんですね。
ヒノキとの違いでいうと、ヒノキは育つ環境が良ければ成長しやすく(太くなりやすく)
上に伸びていくんです。そうなる事で、通し柱に使う事が出来る長さに、
成長するんですね。
しかし、ケヤキは、5~6メートルくらいのところで、枝がわかれて行きやすく、
なかなか、通し柱に使えるくらいの長さに、真直ぐ育ちにくいんですね。
しかも、固くて扱いにくく、木目のように曲がっていく、
見る目がないと、使えない材料なんですね。
そんな事を、踏まえながら、 何年も寝かせてみなきゃ、選べない、使えない。
それでも美しいケヤキが重宝されてきたのは、
それだけ、使えるケヤキが少なくなり時間がゆっくり、
流れていたからかもしれません。
大切にゆっくり時間をかけて素材を選び、
ゆっくり時間をかけて建てていく。
それでも、丈夫で長持ちする家を造り 末代まで残してやりたい、
という願いが、 今の古民家の味わいに繋がっているのでしょう。
自分が毎日暮らす家だからこそ、 素材や内容にこだわり、
大切にていねいに選んでいく。
それが、日本家屋だと思います。
ていねいに暮らす。
大切なものを子どもに伝える。
自然が生み出す美しいものが好き。
そういう生き方に共感できる人になら きっと、
日本家屋の良さも伝わるのではないかと思います。
このグログを、読まれて、色んなご意見があるとは思いますが、
長く住み続けて頂きたいとの思い、ケヤキの希少価値等、
日本の木をよく知って頂きたいとの思いからです。
皆様のご理解を賜りたいと思います。
棟梁
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